ハム〔ジャンボン〕jambon / 英ham / 伊prosciutto
塩漬けした豚のもも肉をゆでたり、乾燥後乳酸発酵させて作る保存食品。フランス語はjambe「脚」の派生語。肩肉も同様に調理するが、これをジャンボンと呼ぶことは違法である。生ハムは豚を多く飼育していたガリア人の考案で、ローマ人へ売るためにもも肉を塩漬けしてから燻蒸した。ローマ人によりイタリア、ドイツ、スペイン、東ヨーロッパへもこの技術が広まったが、フランスはハム製造の先進国であり、中世にノートルダム寺院前の広場で行っていたハム市foire aux jambousは今日でもパリ11区リシャール・ルノワール大通りで年1回1ヶ月間開催される。中世では暖炉に下がっているハムの数が家の富の象徴であった。そのまま食べるにはかたいもも肉を保存用に調理したのがハムであり、ベーコンも同様のものだが、より上質な背肉(ロース)やフィレ肉は生で調理する。英語でもハムはフランスのジャンボンと同様のものを示し、ロースハムをつくっているのは日本だけである。また日本で行っている人口たんぱくなどの注入による増量は、フランスでは一切認められていない。温製にして供する場合はブレゼしてから仕上げる。ハムには加熱ハムと生ハムがある。
生ハム〔ジャンボン・クリュ〕jambon cru
塩をこすりつけ、乾燥させたハム。長期間熟成させるため乳酸発酵するが、材料の質や製造過程の不手際で腐敗することもある。
加熱ハム〔jambon cuit〕
塩漬けまたはソミュール漬けにし、多くは針で塩水を注入した豚のもも肉をそのまま、または型に入れ、プレスしたり布や網で包んだりして、ゆでるか蒸してつくる。
コッパ
イタリア発祥のハム。「首肉」を意味するイタリア語。北イタリア、ロンバルディア地方ではその名の通り上肩肉を含む首肉を塩漬けにし、香辛料をふって大腸に詰め、6ヶ月以上冷暗所で乾燥させる
サラ・ベルナール Sarah Bernhardt (1844~1923)
本名ロジーヌ・ベルナールRosine Bernhard。19世紀最高の女優の一人。全盛期は社交界の花形であり、同時代の大料理人エスコフィエを特にひいきにしていた。この大女優にささげた料理にサラ風、サラ・ベルナール風がある
いちご サラベルナール風
オレンジキュラソーとコニャックを混ぜてイチゴを浸す。タンバルにパイナップルアイスクリームを敷いていちごをのせ、オレンジキュラソ風味のムースを上に盛る
コンソメ サラベルナール風
ざりがにバターを加えた鶏のファルスでつくった小さなクネル、コンソメでポシェした牛の骨髄、ゆでたアスパラガスの先端、トリュフの千切りをタピオカ入り鶏のコンソメ・ドゥーブルの浮き身とする
モルタデル
豚肉にピスタチオなどを加えて牛の大腸に詰めたイタリア、ボローニャ発祥の大型ソーセージ。イタリア語mortella「ミルテ(香草の名)」が語源。かつてはミルテで香り付けしたためこの名となった。ボローニャでは豚と牛をペースト状にし、豚の背脂の角切りを混ぜて燻製にかける。薄切りにしてオードヴルとする
モルネ風
ベシャメルソースに卵黄とグリュイエールチーズを加えたソース、およびこのソースを使った料理に用いる表現。19世紀末パリのレストラン、デュランの料理長ヴォワロンが考案し、同時代の料理人の名をつけたといわれている
ソース・モルネ
ベシャメルソース1ℓに、使用する魚の煮汁200ccを加え1/3に煮詰める。おろしたグリュイエールとパルメザンチーズ各50gを加え、仕上げにバター100gを加える。用途により魚の煮汁を加えないこともある
チョリソ
スペインの辛いセミドライソーセージ。スペイン西部エストレマドゥーラ地方発祥。豚肉に唐辛子やニンニクなどを加えて豚の小腸に詰めてつくる。牛や仔牛の肉を使ったり、マデラ酒を加えてマリネしたりと、様々なヴァリエーションがある
パテ
材料を生地で包み、オーブンで焼いた、冷製、温製の料理。pate「生地」の派生語。テリーヌ型なとにパテ生地、折パイ生地。ブリオシュ生地などを敷き、材料を詰めて焼くものと、ショソンなどのように型に入れずに生地で包んで焼くものがある。生地を用いずにペースト状の材料を耐熱容器でつくるテリーヌなどや網脂で巻いてつくるアトリヨやカイエットなどもパテと呼ぶため、生地で包むものをパテ・アン・クルート「pate en croute」殻の中のパテと厳密に言うこともある。
リエット
豚や鶏などの肉を煮て繊維状にほぐし、脂肪とともに固めたペースト。古フランス語rille豚肉の塊に指小辞etteをつけた語。西フランスのものが名高いが、アンジュー地方アンジェでは豚のばら肉、トゥーレーヌ地方トゥールでは肩肉、ル・マンではがちょうを用いることが多い。また、鮭やうなぎ、まぐろなどを繊維状にしてバターと混ぜたものもこう呼ぶようになった。冷製オードヴルとしてパン・ド・カンパーニュなどとともに供する。
ブリュノワーズ brunoise / 英 brunoise / 伊 brunoise
1~2mmのさいの目にする野菜の切り方、およびこのように切った野菜やハムなどの食材。
ピクルス pickles / 英pickle(s) / 伊pickles , sottaceti
香辛料入りの酢に漬けた野菜やフルーツ。ピクルとは塩、酢、マスタードシード、フェンネルシードなどを加えた酢のこと。14世紀にこの漬け汁で野菜を漬ける方法を考案したオランダ人漁師ヴィレン・ベウケルツの名から中世オランダ語pekelとなり、15世紀に英語pykyleおよびpekileとなって19世紀初めフランスへ伝わった。カリフラワー、キャベツ、クールジェット、シャンピニョン、小玉ねぎなどの野菜や、プラム、さくらんぼ、りんご、洋梨、桃などのフルーツを別々にまたは合わせて漬けたのもだが、フランスや日本では酢につけた小きゅうりを指すことが多く、フランス語ではコルニション(⇒きゅうり)ともいう。冷静の肉料理やテリーヌ、パテ、ハムやソーセージの付け合わせとするほか、刻んでラヴィゴートやグリビーシュなどのソースやサラダに加える。
ピザ pizza / 英 pizza / 伊 pizza
薄くのばしたパン生地に、トマトなどの野菜、チーズ、魚介、ハムなどをのせてパン用オーヴンで焼いたイタリア中南部の料理。小麦粉をこねて焼きやすいように薄くし、上に具をのせたものは、ギリシャ、ローマだけでなく、エジプト、インドの古代文明時代から存在し、タルト、パイなども同種である。イタリア語pezzo「かけら」が語源。19世紀初めにトマトをのせるようになり、今日のスタイルができた。第2次世界大戦後ナポリ風のピザが世界を席捲し、イタリア料理の代名詞ともなった。作り方は無限にあり、ベネト地方ではピンツァpinza、最南端のカラブリア地方ではピッタpittaという。フランスにも多くのピザ屋pizzeriaがあり、多くは薪を燃やした釜でで焼いており、軽便な食事をとれる食堂として定着している。グランド・キュイジーヌでも食前酒とともに、アミューズ・グールの一品としてミニピザを供することがある。
サラダ〔サラート〕 sarade / 英 salad / 伊 insalata
生、もしくは加熱してから冷ました野菜にドレッシングをかけたオードヴルまたはアントレ。ラテン語sal「塩」からプロヴァンス語salada「塩を加えた」から派生し、語源となった。ローマ人はよくサラダ菜を食べていた。菊ぢしゃ、ロメーヌが中世になって登場し、ラブレが書き、ルイ14世が様々な食べ方をするようになってフランスはサラダの先進国となった。フランス革命の亡命者が当時のサラダ後進国イギリスでサラダのあえ方を教え、フランス風の食べ方が広まった。19世紀には、ベルギーで開発したアンディーヴがパリの市場に並び、レストランが隆盛して多くのサラダ用ルセットが考案され、今日にいたっている。現在、主にオードヴルの一品として温製料理に付け合せたりするサラダ仕立ての料理が各種存在する。生野菜に酢、油、塩、こしょうを混ぜたドレッシングをかけるものだけでなく、多くのバリエーションがある。
ソーセージ〔ソシス、ソシソン〕saucisse 、 saucisson / 英 sausage / 伊 salsiccia 、 salame
豚肉と豚の脂肪、または牛などの肉を細かくして腸詰めしたもの。ワイズの大きいものをソシソン、小さいものをソシスといい、いずれもラテン語salsus「塩を加えた」から俗ラテン語salsicia「塩漬け肉」が成立したのが語源。山羊の網脂で肉を包んだソーセージに似たものはギリシャ時代から存在し、ローマ時代には保存食品として腸詰めの塩漬け肉を乾燥させたり燻製にしたりした。ハムつくりの名人だったガリア人やゲルマン人も同様のものをつくっていたので、今日ではイタリア、フランス、ドイツなどヨーロッパの国々では非常に多種のソーセージがある。日本へは明治期に伝わったが、第1次世界大戦時に中国の青島(チンタオ)で捕虜となったドイツ軍人の中にいたソーセージ職人が製造法を伝えてからつくるようになった。そのため今でも日本ではソーセージというとドイツを思うのである。
生ソーセージ
生または塩漬け肉を脂肪とともに超などに詰めたもの。直火で加熱して食べる。
加熱ソーセージ
生または塩漬け豚肉を脂肪とともに腸詰めし、エテュヴェしたもの。
フランクフルトソーセージ〔ソシス・ド・フランクフォール〕 saucisse de Francfort
豚肉をペースト状にし、羊腸に詰めてエテュヴェし、オレンジ色に着色するか燻製にする。長さ13~15cm、直径2.2~2.6cm。ドイツ、フランクフルトが発祥地。世界各地でつくっている。
ドライソーセージ
生または塩漬け豚肉を腸詰めし、そのまま、またはエテュヴェし、燻製にして乾燥させる。薄切りにしてそのまま食べる。
サラミ salami
イタリアのドライソーセージの総称。エテュヴェしてから乾燥させることが多く、にんにく、パセリ、唐辛子などを加えたり、赤ワイン風味にする地方もある。豚肉だけでなくガチョウの肉でもつくる。フランスではアルザス地方で作っており、牛肉と豚脂を詰めて燻製にする。オーストラリア、ドイツ、ハンガリー、スイス、デンマークでもつくる。
オランダふう -風
オランダの食材を用いたりオランダ料理に影響を受けた料理、またはソース・オランデーズを使った料理に用いる表現。オランデーズともいう。
ソース・オランデーズsauce hollandaise
水大さじ4杯、酢大さじ2杯、粗挽きこしょうと塩各1つまみを2/3に煮詰め、鍋を湯せんにかける。卵黄5個に水大さじ1杯を加えてよく混ぜ、ホイップしながら鍋に加え、濃度がつくまでホイップを続ける。溶かしバターまたは小さく切ったバター500gをホイップしながら少しずつ加える。途中で水大さじ3~4杯を少しずつ加えるとより軽く仕上がる。塩とレモン汁少々で味をととのえて布漉しし、湯せんにかけて保存する。このソースにオレンジ果汁、焦がしバター、ホイップクリームを加えるとそれぞれ別名のソースとなる。
メルバ風 melba
オーストラリア人声楽家ネリー・メルバNelly Melba(?~1931)の名を冠したグランド・キュイジーヌの料理に用いる表現。彼女はイギリスで大好評を博した。
ピーチメルバ〔ペーシェ・メルバ〕
1892年、リッツが総支配人であったホテル・サヴォイではエスコフィエが料理長として腕をふるっていた。エスコフィエはコヴェントガーデンのオペラハウスで彼女の歌うローエングリンが好きだった尾で、同ホテルに逗留していrたメルバがオルレアン公と夜食をとった際、かねて考案していたデザートを供した。それはオペラに登場する白鳥をあしらって、氷彫刻の白鳥の背に銀の器を置き、ヴァニラアイスクリームと半割の桃のコンポートをのせたものだった。1899年ロンドンのホテル、カールトン開業の日に、初めてピーチメルバの名で、このデザートを世にだしたが、はじめのものとは多少異なったものになっていた。
ヴァニラ風味のシロップで半割の桃をゆで、冷めてから銀の器に盛ったヴァニラアイスクリームの上にのせ、フランボワーズのピュレを塗る。これにスライスアーモンドをふると”桃 枢機卿風peche cardinal”になってしまうので注意。
メルバトースト〔トスト・メルバ〕toast Melba
フォワ・グラのテリーヌなどに添える薄いトースト。ピーチメルバ考案の後、ホテル・サヴォイの総支配人リッツの妻マリがお茶の時間にだされるトーストを見て、もっと薄くぱりぱりにしたものにできないかとエスコフィエに尋ねた。エスコフィエは1度焼いたトーストを半分の厚さに切り、再び焼いて供した。そこでトースト・マリと命名されたが、後にメルバが病気になった時、彼女のファンであったマリが名を譲り、メルバトーストとなった。
トゥッティ・フルッティ tutti frutti 伊 tutti frutti
様々なフルーツを混ぜた、イタリア発祥のデザート。「すべてのフルーツ」の意味。砂糖漬け、コンポート。または生のままのフルーツをさいの目にした盛り合わせや、ボンブ、焼いたシュクレ生地に挟んだケーキなどがある。
クープ・トゥッティ・フルッティcoupe tutti furutti
フルーツの砂糖漬けをさいの目にし、キルシュ酒とマラスキーノ酒でマセレしてクープに盛る。いちご、パイナップル、レモンのアイスクリームを交互に盛り、間に同種のフルーツを挟む。
ボンブ・トゥッティ・フルッティbombe tutti frutti
ボンブ型の内側にいちごアイスクリームを張り、さいの目にしたフルーツの砂糖漬けを混ぜたレモン風味のボンブのアパレイユを中に詰める。
コンフィズリ confiserie / 英 sweet,candy / 伊 dolciumi
飴やキャラメル、パード・ド・フリュイなど砂糖を使った菓子類。これらを作ったり売ったりする職業もこう呼ぶ。
コンポート compote / 英 compote,stewed furuit / 伊 composta
フルーツのシロップ煮。ラテン語componere「ともに入れる」が語源。丸ごとまたは切ったフルーツを、水または赤ワインに入れて砂糖、シナモン、ヴァニラ、丁字などを加えて弱火で煮、冷ましてデザートにしたり、タルトやシャルロットなどに加えたりする。鳩やうさぎなどを、肉がばらばらになるまで煮込み、ルウでつないで小玉ねぎやベーコンを加えた料理もこう呼ぶ。また玉ねぎやピーマンを煮溶かしたものもコンポートである。
アプリコットのコンポート
2つに切って種を除いたアプリコットをシロップで少々ゆでて皮をむき、同じシロップでやわらかくなるまで煮る。皮をむいたアーモンドをキルシュ酒を加えたシロップでマセレして半分に割り、アプリコットのくぼみに入れてシロップをかける。
フルーツのコンポート
1種類または数種のフルーツを好みの大きさに切って好みの香りをつけたシロップで煮て冷まし、同じフルーツのピュレをかける。
洋梨のコンポート
洋梨をそのまま、または1/2、1/4に切り、皮と種を除く。実のかたい洋梨ならレモン汁を塗って少々ゆで、やわらかい洋梨ならそのまま、ヴァニラ風味のシロップでやわらかくなるまで煮る。レモンのゼストとシナモンを加えた赤ワインシロップで煮ると”洋梨のコンポート 赤ワイン風味”compote de poire au vin rougeとなる。
りんごのコンポート
ノルマンディ地方のルセット。りんご2kgの皮をむいてくし形に切り、砂糖150g、切り開いたヴァニラ棒1本、水少々を加えて蓋をし、30分煮る。ヴァニラを除いてミキサーにかけ、カルヴァドス酒50ccに1時間浸した砂糖漬けフルーツ100gとカルヴァドス酒、湯に浸してもどした干しぶどう30gを混ぜてあたたかくして供する。
マスカルポーネ 伊 mascarpone
イタリアのロンバルディア地方などで、牛乳からつくるフレッシュチーズ。マスケルポーネ mascherponeとも呼ぶ。ミラノ近郊のローディ方言mascherpa「もっと加熱する」が語源。脂肪分60~90%。バターのような風味で酸味がある。砂糖をかけたりブランデーやコーヒーを加えてデザートとしたり、ティラミスの材料にする。